1. 皮膚温度上昇タイプ(血管拡張型・ニュータイプの冷え症)
* 「次世代型冷え症」の出現が冷え症人口を増加させた
冷え症で悩んでいる人のなかには「身体が氷のように冷える」「身体を氷のなかにつけているよう」「世の中で自分がいちばん寒い」という切実な訴えも聞かれます。
そこで、実際にひどい冷えを訴える人たちの体表温度を測ってみたところ、以外にも足先の温度が30℃を超えているケースがありました。
「全国冷え症研究所」では年間4000人以上の方の体表の温度を測っていますが、足先の温度の平均は27℃±1℃ほど。
平均値より3℃も高い足先の人が、なぜ極端な冷えを訴えるのでしょうか?
これは皮膚の温度が上昇するニュータイプの冷え症で、とても不思議な現象なのですが、高熱を出したときに悪寒を感じるメカニズムに似ています。つまり、末梢血管が拡張してどんどん熱を放出しようとするため、手先や足先の温度が上がるのです。
こうしたニュータイプの冷え症は、全体の実に30〜40パーセントを占め、増加の傾向を見せています。
ニュータイプの冷え症のなかで、本人は足や手のほてりだけを感じ、冷えに気づかないタイプを「かくれ冷え症」といいます。
一方、ニュータイプの冷え症のなかでも、手足はもちろんのこと、全身が寒いというタイプを「次世代型冷え症」と呼びます。
次世代型冷え症では、通常は血管が拡張し、皮膚から熱を放出するために身体は寒さをかんじます。次に何かのきっかけで少しでも身体が冷たさを感じると、今度は一気に皮膚の血管が収縮し、皮膚温度を極端に低下させて寒さを感じます。次世代型冷え症はこの状態を一日じゅう、休まず繰り返すので常に身体は寒さを感じてしまします。これは、全身の自律神経が軽い麻痺を起こしているために起こる現象です。
次世代型冷え症は、木枯らしの吹く真冬など、身体はとても冷えていると感じているのに、足先の温度は30℃以上を示すことが多いのです。
このタイプの人は、不思議なことに体表面の温度を下げると身体はものすごく温かいと感じます。
従来型の冷え症の場合は、手先・足先を中心として下半身の冷えを訴えます。次世代型冷え症は、手足の冷えも訴えますが、心臓に近く体表温度も高い体幹の部分の冷えを強く訴えます。
具体的には首、背中、腰、腹部といったところです。簡単な見分け方としては、どなたか冷え症ではない人に足先を手で触ってもらいます。
通常、冷え症でない人の手先の温度は30℃前後です。もし冷え症の人が足を触られて冷たいと感じたならば、この冷え症の人の足先の温度は30℃以上あるはずです。
つまり、次世代型冷え症の可能性が充分に考えられるのです。

* 真夏でも電気毛布が放せない重度冷え症症候群
先日、60代の女性が冷え症の相談にみえました。お話をうかがっていると、夜は寒さのために熟睡できず、真夏でも電気毛布を使用して、冬ともなると電気毛布と電気敷き布団をセットで20年以上使っているとのこと。その症状は年々ひどくなって、肩こりや腰痛、便秘といった症状も出てきたそうです。
いくつもの大学病院で検査を受けても異常が見当たらないといって来院されました。
この女性は、足先の温度が35℃もありました。脇の下の温度は36.5℃。通常、足先の温度は27℃±1℃ですから、まず考えられないこと。この女性は「次世代型冷え症」の典型です。
このように冷え症が原因で長年さまざまな症状に悩まされ、しかも年々症状が悪化することを「重度冷え症症候群」と呼びます。
このような重度の冷え症に陥ってしまう要因のひとつに、電磁波や静電気があります。電磁波や静電気を長時間身体に帯電させていると、血液がドロドロになり、血行を阻害したり自律神経のバランスを乱してしまうということは、すでに医学的に解明されています。
「全国冷え症研究所」では、大量に電磁波を浴びてしまう電気毛布や電気敷き布団などはいっさいすすめていません。
この方の場合も、足先の血管を収縮させて温度を下げたところ、とても温かいといわれました。次世代型冷え症は、手足の温度を下げなければならないのです。
ところで、このようなニュータイプの冷え症はなぜ、増えてきているのでしょうか?
それは、冷房の影響や家電製品、OA機器からの電磁波や静電気が悪影響を与えていることが大きな原因のひとつになっています。
化繊の洋服が静電気を起こすということも、忘れてはなりません。
こうした現象を日常生活のなかで意識している人は、わずかなのではないでしょうか。
ですから、今後、このタイプの冷え症はますます増えてくるのではないかと思います。
次世代型冷え症の特徴としては、年々症状がひどくなり、冷えを感じる部分がさらに広範囲になってきます。
また、免疫機能が衰え、風をひきやすいといった軽い病気から始まって大きな病気を引き起こしやすい体質になるなど、さまざまな変調が起こります。
一方、ニュータイプの冷え症のなかの「かくれ冷え症」も、本人はなかなか気がつかず、対応が遅れがちになる問題の冷え症です。
なにしろ身体はぽかぽかして、手や足先も普通の人より温かく、自分が冷え症だとは思いもしない。けれども、深部温度計で内臓の温度を測ってみると、冷えを自覚している人よりも2〜3℃も低かったりするのです。
このような冷え症になると、本人は冬でも布団の外に足を出しておきたいほど温かく感じますが、実はとても内臓が冷えているのです。この内臓の冷えをそのままにしておくと、胃腸疾患や泌尿器疾患になりやすくなります。
かくれ冷え症の人は、胃痛や膀胱炎などをよく起こします。
このかくれ冷え症の割合も、最近は増えてきています。
従来型の冷え症の場合、足先の温度は18℃〜19℃まで下がることがあるのに対して、かくれ冷え症の人は手先、足先の温度が平均値より2〜3℃も高くなっています。
身体が異常事態に陥るこれらの冷え症を克服するには、まず適切な対策法を知ることです。そして、自分自身で努力する以外に冷え症ワールドから抜け出せる道はありません。

* 全身の機能が低下すると、体温も下がる
健康な女性の平均平熱は36.5℃程度ですが、最近では35℃台いう人が増えてきました。これは女性だけに限らず、平熱が高いはずの子供にも見られる傾向です。
そうした変化を起こしている原因としては、偏った食事、低血圧、基礎代謝の低下、自律神経の乱れなどがなどが考えられます。
特に猛暑のつづく近年は、夏に冷房のなかですごす時間が増え、汗をかくことも少なくなりました。それは一見、快適そうですが、実は人間が本来もっている大切な機能の働きを鈍らせてしまうもとになっているのです。
忙しい現代社会のなかで生活のリズムは乱れがちで、ストレスを生みだしやすい環境のなかに私たちはいます。
すると、体温調節がうまくいかない、血液の循環が悪くなるなどの、自律神経がバランスを崩した状態に陥ってしまいます。その結果、交感神経の連携プレイも乱れてしまい、不必要に冷えたり、ほてったりする身体になってしまうのです。